九十歳の記念アルバム

カラーセンター(写真館)でアルバムのサンプルを作成するという事で母の通う施設から希望者を募る案内が来た。色々な公共施設に置いても良いという条件を呑めば無料で作成してくれるというので早速、母の卒寿の記念になるとお願いしてみる事にした。まずは母の古い写真を探す所からスタートだ。以前から母が小学校一年生位の時撮ったお稚児さんの写真が見つからないと言っていたので家中を一日がかりで探し回った。思いつく心当たりの所はすべて探したがついに見つからなかった。残念でならない。母の実家には母の小さい頃の写真が残っているかもしれないと実家に連絡を取ってみたが連絡が取れず、そのうち新型コロナウィルスの拡大で自宅で自粛するという緊急事態になった為、三次の実家に訪問する事も出来なくなりやむなく諦めた。家にあるアルバムの中で色々集めてみた。中には母が何歳の時の写真か分からないものもあったので母に尋ねてみたが今の母は記憶が定かではなく分からなかった。それで大阪の八重子姉ちゃんにラインで写メして聞いてみたら年代が分かって来た。そればかりか我が家にない懐かしい昔の白黒写真を何枚かラインで送ってくれた。これで結婚前の写真はないものの母がお嫁に来てまだ若かった頃、母と写った私達の小さい頃の写真が何枚か揃った。写真をアルバムに載せる順番を決めたり写真にコメントを付けたりの作業をするのはとても楽しかった。物忘れの多くなった母も昔の記憶は残っており古い写真を見ながらひとしきり昔話に花が咲き盛り上がった。いつも痛みの訴えの多い母だがこの時ばかりは懐かしそうに笑顔でおしゃべりしていた。サンプル用の写真は三十枚との事だったが色々集めると七十枚位になったので折角作るなら全部載せたいと思い差額分を支払う事で了承してもらい我が家用を作ってもらう事にした。思いがけず母の九十歳の歴史をアルバムにする事が出来て本当に良かった。母もとても喜んでくれた。

                             つづく